この世界は、勇者を求めている。

 100年の周期で復活する魔神に対抗するため、
 いつも、いつも、外の世界からの勇者を求めている。
 果たして、この連鎖はいつから始まったのか
 それを知る者は今や存在していない。

 現在の人間たちが知っているものは2つだけ。
 魔神が復活する時期になったこと。
 勇者は未だに召喚されていないということ。

 でも、勇者のいない現状にも関わらず
 人間たちはそこまで慌てていない。
 それもそのはず、勇者が召喚されたとしてもその存在はいつも秘密裏に隠されていた。
 なので、過半数を占めている一般人たちは何こともなく今日を生きている。

 なら上にいる人達はどうか?
 もちろん、混乱の真っ只中だ。なので、先程の【慌てていない】はちょっと語弊がある。
 正確には【慌てていないように見える】が正しいだろう。
 ここにも、とある王国の王と大臣が訪れない勇者で頭を悩ませていた。

「なぜだ…、なぜ勇者が召喚されない!?」

「わかりませぬ…」

「儀式はちゃんと行っておるのだろうな!」

「それは滞りなく。月1回で毎月行っています。」

「週1回に回数を増やせ!我らにはもはや時間がない!
 これ以上遅くなると勇者を育成する時間がなくなる。例え来たとしてもジリ貧だ」

「了解しました。」

 答える側も命令する側も顔色が優れないのは同じであった。
 どちらも考えているのは同じだろう。

【ーーーもしかして、このまま勇者が来ないのではないか?】

 考えはしても決して口には出さない。
 出した瞬間、それが現実になってしまいそうだからだ。
 なので、ここで次に話すのは似たような別の話題になる。

「…ところで、自称勇者たちはどうなっている。」

「各地で絶え間なく出ております。われこそ真の勇者だと言ってる輩は本当に数えしれません。
 当たりだったことは今までなかったのですが。」

「まあ、そうだろうな。」

 勇者はそう簡単に召喚されない。
 時期が合わないといけないし、条件がそろわないと呼ばれない。
 そして何より、呼ばれる勇者にも特定の条件が掛かっている。

「ーー勇者の条件を緩めるしかないのではないか?」

「駄目です。年齢、健康状態、性格、3つとも必要です。」

「それが必要なのは知ってるが、年齢は緩めてもいいのではないか?」

「と、申しますと?」

「」
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